飯野 健太郎
株式会社coordimate 代表取締役CEO
2011年 NTTドコモ入社。入社後、法人営業、M&A・PMI・出資先の経営管理、ドコモグループの教育事業の中核子会社での教養コンテンツの企画・制作・運用の責任者や中期戦略策定などに従事。2019年より兼務で新規事業の立ち上げに着手。4年間の挑戦を経て2022年7月にcoordimateを立ち上げ、2024年4月よりドコモの新規事業創出プログラム「docomoSTARTUP」における「STARTUPコース」適用第1号案件の一社としてスピンアウトし現職。
豊澄 幸太郎
株式会社point0 取締役副社長
2008年松下電工入社。
パナソニックにてソリューション営業やWell-Beingの新規事業開発に従事。
2020年から株式会社point0の副社長を兼務として、異業種の大企業が連携する共創プラットフォームの経営・事業推進を担う。
企業の技術や強みを顧客課題と結びつけ、新たな事業価値の創出に注力している。
大賀 崇央
TMIP事務局(三菱地所)
新卒で大手金融機関に入社し、国内営業やドバイ駐在などを経験。2025年に三菱地所に入社。TMIP事務局にて、会員企業の新規事業創出に向けた協業・実証支援や、TMIP Innovation Awardの企画・運営などに携わる。
丸の内エリア全体をフィールドに、複数企業の共創による実証実験を推進する「まちまるごと実証実験by TMIP(以下、まちまるごと実証実験)」。エリア内のオフィス空間や企業集積、400団体を超えるTMIPコミュニティ(2026年10月時点)の知見・アセットを掛け合わせ、個社単独では実現しにくい実証実験を、TMIP事務局の伴走支援のもとで形にする取り組みです。2025年8月の始動から約1年が経ち、既に4つのプロジェクトが立ち上がっています。
第1弾として実施したのは、NTTドコモグループの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」からスピンアウトした株式会社coordimateによる、次世代型デジタルミラーを活用したスタイリングサービスの実証。第3弾では、大企業を中心に約20の企業・教育機関が参画する共創コンソーシアムである株式会社point0が、パナソニックグループ、三菱地所と連携。大手町仲通りを舞台に、移動設置可能な空間「WELL Cabin OFFMO(オフモ)」の有償サービス実証を実施しました。
今回は、coordimate 代表取締役CEOの飯野健太郎さん、point0 取締役副社長の豊澄幸太郎さん、そして両プロジェクトに伴走したTMIP事務局の大賀崇央による鼎談を実施。実証に至った経緯や現場で直面した想定外の出来事、そして実証が事業にもたらした変化について語り合っていただきました。
実証実験を「イベント」で終わらせず、「事業成長の起点」にするためには何が大切なのでしょうか。
「実績がない」という課題を乗り越えるには、「実績をつくる」しかない
——まずは、「まちまるごと実証実験」とはどのような取り組みなのか、大賀さんからお伺いできますか?
大賀(TMIP):TMIPは2019年から、さまざまなプレイヤー同士の出会い、イノベーションの種を見つけ育てること、そして丸の内というフィールドを生かした実証実験などをサポートしてきました。
2025年5月、TMIPを運営する三菱地所が「まちまるごとワークプレイス構想」を発表しました。テナント個社単独では持つことのできない機能を三菱地所が提供し、エリア全体をワークプレイスとして提供するという構想です。そこで、TMIPの強みである「事業成長支援」においても、三菱地所や丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)が有する多様なアセット・ネットワークを活用しながら、事業創出や社会実装を後押しする仕組みを構築しました。
その仕組みをわかりやすく伝えるために、この取り組みを「まちまるごと実証実験by TMIP」と名付け、2025年8月に開始しました。
——それぞれが取り組む事業について教えてください。
飯野(coordimate):coordimateは、服選びの課題を解決するソリューションをBtoC、BtoBtoC、BtoBで提供しています。原点は、私自身がずっと「服がダサい」と言われ続けてきたこと(笑)。
元々所属していた株式会社NTTドコモの社内新規事業制度に応募し、4年間で6回失敗した末に、2022年7月に無料ファッション相談アプリ『coordimate』を事業化しました。その後2023年7月に、新規事業共創プログラム「docomo STARTUP」が新たに創設され、同プログラムの第1号案件の一社としてスピンアウトしました。
現在はアプリに加え、BtoB事業として次世代型デジタルミラーソリューションを展開しています。AGCのディスプレイ一体型ミラー「ミラリア」を基盤として独自コンテンツを組み合わせた次世代型デジタルミラーの前に立つと、AIがファッションを診断し、おすすめのコーディネートを提案してくれるサービスです。商業施設などに設置することで、入居するアパレル店の売り上げアップに寄与することを目的としています。
豊澄(point0):point0は、「働く空間の価値」を創出するオープンイノベーションの加速を目指し、2019年2月に設立された協創/共創のためのコンソーシアムです。私はこのコンソーシアムに参画するパナソニックグループに籍を置きながら、立ち上げから兼務で関わっています。
立ち上げの背景にあるのは、働き方の多様化やウェルビーイングへの関心が高まり、オフィスビル内にとどまらない新たな就業環境やリフレッシュ空間のあり方が求められていること。空間への多様なニーズに応えるためには、さまざまなサービスや技術を持った大企業間の共創が必要だという考えから生まれました。
それ以来、参画企業によるオープンイノベーションを推し進めてきたのですが、思うような結果に至らないケースも少なくありませんでした。そこで2021年からは、point0として事業を立ち上げ、参画企業を巻き込む形で共創を進める戦略にトライをしました。
その中で生み出されたアイデアの一つが、移動設置可能なマルチパーパス空間「WELL Cabin OFFMO(以下、OFFMO)」を活用した事業です。事業内容は、けん引免許不要で運べる750kg以下のコンテナの内部に、さまざまな用途に合わせた空間をつくり、路上や広場などに設置するものです。その空間を貸し出すことで利益を得ることを想定しています。
ベースにあるのは、都市の中にあるデッドスペース、つまりお金を生まない場所に新たな価値を生み出すという発想です。
——「まちまるごと実証実験」を活用する前、事業にはどのような課題があったのでしょうか。
飯野(coordimate):coordimateに関しては、「実績」がなかったことです。
私たちのアプリでは、ユーザーの1〜2割がアパレル店の試着室内で写真を撮り、コーディネートの相談をしていました。私たちの調べによれば、日本では年間約90億回以上の試着が行われているにもかかわらず、試着室のデータはこれまでどの企業も取れていなかった。そこに着目したアパレル企業や商業施設のデベロッパーからお声掛けいただき、データ活用に向けた実証実験を開始しました。
しかし、アプリだけではユースケースが十分に集められず、さらにリアルな場での価値を示すにはハードが必要だとわかりました。もともとはアプリだけでBtoB事業にも打って出ようと考えていたのですが、それが難しいとわかり、AGCに「ミラリア」を活用できないかとオファーしたんです。
次世代デジタルミラーの完成後、NTTドコモの展示会で発表すると、大きな反響がありました。ところが、実際に商用環境で置いてくれる場所がなかなか見つからない。
そこで、2024年11月から約1年間、デベロッパーを中心に約30社と商談をしました。ほとんどの企業が「とてもいいプロダクトだ」と言ってくださったのですが、「それで、どのような実績があるのですか?」と聞かれると答えに窮してしまい…。
——実績をつくるために営業をするなかで、「実績がないこと」が最大のネックになったわけですね。
飯野(coordimate):そういうことです。商業施設の賃料収入の6割以上はアパレル店舗が占めるとされ、デベロッパーにとってアパレル企業は非常に重要な顧客です。一方でアパレル店舗は人手不足が深刻で、テクノロジーを活用しながら売上を維持・拡大する仕組みが求められている。
ただ、「このミラーを設置することで、どれだけ売上が上がるのか」という問いに、実績がない状態では答えられません。効果がわからないと設置してもらえない。でも、設置しないと効果がわからない。まさに「鶏が先か、卵が先か」でした。
——まずは無料で設置してもらうという選択肢はなかったのでしょうか。
飯野(coordimate):もちろんそれも考えたのですが、サービスを無償で提供して実績をつくることには、リスクも伴います。私たちは無料アプリから始めたこともあって、マネタイズの難しさが身に染みてわかっていました。「実績づくりのために無料でサービスを提供する」と言えば簡単だったのかもしれませんが、それをやると将来的なマネタイズに何らかの問題が発生する危機感があったんです。
じっくりと時間をかければ、「最初の1社」を見つけられたのかもしれませんが、私たちのような限られた資金で戦うスタートアップにそんな余裕はありません。資金ショートの危機も迫るなかで、「実績をつくること」は私たちにとってまさに生命線でした。
——豊澄さんはいかがですか?
豊澄(point0):「まちまるごと実証実験」を活用する1年ほど前、TMIPを運営する三菱地所と共創し、東京駅近くの常盤橋においてOFFMOを無償で提供する実証実験をしたんです。結果的にはたくさんの人が利用してくださいました。アンケートでも高い評価を得られて、空間としての価値は確かめられたものの、「事業として成立するかどうか」までは検証できていなかった。
実際に事業として進めていくためには、有償でサービスを提供し「お金を払って利用してくださる方はどれくらいいるのか」「そのうちリピーターはどれくらいになるか」を確かめる必要がありました。
実証実験を「丸の内」で行うことの価値
——それぞれの課題を解決し、事業を前に進めるために「まちまるごと実証実験」に参画したのですね。参画に至るまでの経緯を教えてください。
飯野(coordimate):あるイベントでTMIPを知ったことをきっかけに、大企業発の新規事業創出を表彰する「TMIP Innovation Award 2024」へ応募しました。最終選考まで進んだ結果、日経ビジネス賞を受賞することができました。最終選考会で行ったピッチの反響は大きく、多くの問い合わせもありましたが、それでもスマートミラー導入には至りませんでした。
そんなときにTMIP事務局から、「多様な就業者が集まる丸の内エリアで、実証実験をしてみませんか」とお声がけいただいたんです。私たちにとって丸の内は、サービスの利用者層に近いビジネスパーソンが多く集まる環境でした。そのため、実際の利用シーンに即した検証ができるだけでなく、実績づくりや今後の事業展開にもつながると考え、喜んでお受けしました。
【プレスリリース】NTTドコモグループ発新規事業「coordimate」とTMIP、丸の内で次世代スタイリングサービスの実証実験を開始
豊澄(point0):先ほど申し上げたように、「まちまるごと実証実験」に参画する以前から、三菱地所とは関わりがありました。常盤橋エリアの再開発を担当されている方とは10年来のお付き合いで、あるときOFFMOのベースになったアイデアを話したところ、「建築費の高騰で建物を建てにくい環境の中、デベロッパーとしても都市のデッドスペースの有効活用を考えていかなければならない」と共感いただき、最初の実証実験につながったんです。
その後、有償での実証実験を行うにあたり、TMIPをご紹介いただきました。丸の内周辺は日本で最も地価が高いエリアの一つです。そこに使われていない場所があるのはもったいない。まずはビジネス感度が高い方々が行き交うこの街で、OFFMOがユーザーに価値を届けられるのかを確かめたかったんです。
【プレスリリース】大手町仲通りにて「移動設置可能な空間“OFFMO”」を活用した検証まちまるごと実証実験by TMIPを2月24日より開始
——TMIPとしては、2社の実証実験には、それぞれどのような可能性を見出していましたか?
大賀(TMIP):coordimateのサービスは誰もが興味を持つものだと思っていましたが、「実績がない」という課題がありました。そこなら私たちが力になれると考えました。
実証実験に先立って丸の内エリアで働く方々へアンケートを実施したところ、約9割が「ビジネスにおいて服装は重要」と回答する一方で、79%が「自身の服選びに不安を感じている」ことがわかりました。エリアで働く方々の課題を解決する取り組みでもあるので、実証を通じてぜひ事業を後押ししたいと思いました。
point0のプロジェクトは、TMIPとしても初めての有償での実証実験となりました。設置から搬出、予約、決済までの一連のオペレーションが機能するのか。さらに、有償のサービスとしてこの街でどの程度受容されるか。それを確かめる非常に貴重な機会になると考えていましたね。
ユーザーに触れてもらわなければ、わからないことがある
——それぞれ、どのような実証実験を行ったのでしょうか。
飯野(coordimate):2025年9月から1カ月ずつ、三菱地所が運営するインキュベーション施設・コワーキングスペースである「EGG」「0 Club」「Inspired.Lab」の共用部にミラーを置きました。私たちも一部期間は常駐し、各施設のコミュニティオーガナイザーの方にも協力いただきながら、利用者の声を集め、改善を重ねながら実証実験を進めました。
豊澄(point0):私たちは2026年2月24日から3月27日までの約1カ月間、大手町フィナンシャルシティ前の大手町仲通りにOFFMOを設置し、異なる機能を持ったさまざまな空間を有償で提供しました。課金方法は2つ用意しました。一つはpoint0が運営するサテライトオフィスの予約システムに載せ、会員企業に利用料金を請求書払いしてもらう方法。もう一つは、近隣のテナントで働く方々が個人でお金を払って利用するのかを確かめるため、現地でPayPayなどで支払ってもらう方法です。
——実証では、どのような成果や発見がありましたか。
飯野(coordimate):実は、ミラーを設置して1〜2日で「これはまずい」と思いました(笑)。当時は手をかざしてミラーを起動させる仕組みで、自社のオフィスでは百発百中で反応していたのに、いざ実証実験を始めてみると照明などの影響もあって全く反応しなかったんです。
また、コーディネートの点数が表示されるのですが、表示時間が長すぎて、ユーザーから「他の人に自分のコーディネートの点数がさらされているようで恥ずかしい」という声もあがってしまって。良かれと思っていたことが全部裏目に出て、最初の1週間で2回もアプリを改修しました(苦笑)。
それでも、3カ月で1,000回以上利用されたことは大きな成果です。しかも、私たちや各施設のコミュニティオーガイザーが促さなくても、自発的に利用してくれる方も多かった。「何点だった?」と入居者同士の共通の話題になり、コミュニケーションツールになっていたのは嬉しい誤算でしたね。
施設ごとにワーカーの属性が全く異なっていたのも、大きな収穫でした。EGGは外資系の方も多くグローバルな雰囲気があり、0 Clubは研究職や理系の方が多い。Inspired.Labは大企業とスタートアップの方がバランスよくいらっしゃいます。
シェアオフィスなので入居企業の属性も把握しやすく、異なる層に1カ月ずつ試してもらえたことで、ペルソナを深く分析できました。コミュニティオーガナイザーの方が、私たちを介さずに「実際、どうでした?」と利用者の本音を引き出してくれたのも大きかったです。
そして最大の発見は、1人ではなく、2〜3人でワイワイ使われるケースが多かった点です。それまで私は、アプリと同じく1人での利用を想定していたんです。でも実証実験の結果、複数人での利用が多いことがわかり、商業施設での利用イメージも大きく変化しました。
つまり、一緒に商業施設を訪れた家族や友人たちと「これ似合うじゃん」「このコーディネートいいね」と言い合いながら、そのままお店に向かう。そんな利用方法になるのではないかと。このサービスの根幹にある価値は、AIによる診断そのものだけではなく、「コーディネートを起点にコミュニケーションのきっかけをつくること」なのだと気付かせてもらいました。
豊澄(point0):実証実験では、無人運営を目指して顔認証を導入したのですが、車の鍵はオフィスの鍵とは構造が全く違うこともあって、うまく開閉ができないことが多くありました。システムは正常に動いているのに、物理的な部分に見落としがたくさんあったんです。結局、社員が1〜2名常駐してフォローする形になりましたが、これは実証実験をしなければわからなかったことでした。
また、point0会員よりも、大手町フィナンシャルシティのテナントの方々による個人利用が多く、リピーターも多かった。改めて立地の重要性を実感しましたし、個人でお金を払ってでもリピートしたいという需要があることもわかりました。最終日には、通りかかった家族連れが休憩に使うという、私たちが想定していなかったユーザーとの出会いもありました。
ただ、最も人気だったマッサージチェアの部屋は、利用が昼休みと夕方16時以降に集中し、1日を通してみると稼働率は20%程度でした。予約も15分単位が圧倒的に多く、前の利用が終わる前に次の人が来てしまうため、無人運営ならバッファを設けるといった工夫も必要だとわかりました。
実証実験で得た気付きが、事業をドライブする
——実証で得た成果や発見は、事業にどのような影響を与えましたか。
飯野(coordimate):まず「3カ月で1,000回以上利用された」という数字と「設置しているだけで使われる」という事実が、営業で非常に説得力を持ちました。そして、理想の利用シーンを社内全員が共通言語として語れるようになったのが大きかったです。
以前は商業施設から「どんな人がどんなシーンで使うのか」と問われても「おそらく……」としか言えませんでしたが、今は具体的に説明でき、先方にもイメージしていただけるようになりました。ポスターのデザインも、以前の個人で利用するイメージから、複数人で楽しむ様子が伝わる構図に変えています。
また、ハードは完璧にしてから出さなければという思い込みも解けました。手戻りが大きいハードこそ、仮説を持った段階で早く実際の環境に出し、改善すべきだとわかったんです。見た目のデザインも、本質的な体験価値があれば思っていたほど利用者には気にされない。
この3カ月の改善があったからこそ、2026年2月より始まった「新宿フラッグス」での試験導入や2026年3月より始まった「たまプラーザテラス」での試験導入では良い結果が出ました。改善前の状態でいきなり商用環境に出していたらと思うと、ぞっとしますね(笑)。
豊澄(point0):検証の結果、1回の利用ごとに個人に課金するモデルは厳しいとわかったので、企業の福利厚生やビルのテナントサービスとして貸し出す方針が鮮明になりました。
さらに、OFFMOという空間を「箱」として貸し出す可能性も見えてきました。たとえば自治体に有事の際の対応拠点、いわばBCP(Business Continuity Plan。事業継続計画)の一環として活用してもらうこともできそうだなと。
企業や個人に「新たなチャレンジを小さく試す場」として貸し出すこともできるかもしれません。ある場所でカフェやアパレル店を出店したいと考えているものの、どれくらいの売上があがるかはやってみないとわからない。だけど、既存の空間で「ちょっとだけやってみる」機会はあまりないじゃないですか。
そこで、OFFMOを利用して期間限定でトライし、その結果に応じて本格的な出店を検討する。特に丸の内で出店するには大きな初期投資が必要ですが、OFFMOを利用すれば気軽に腕試しができますから。
飯野(coordimate):それ、とてもいいですね!アパレル企業と連携して、期間限定でOFFMOを活用した店舗をオープンさせて、そこにミラーを置いてみたい。とても興味があるので、またゆっくりお話させてください(笑)。
大賀(TMIP): おお(笑)今のお二人のやり取りこそ、TMIPの価値だと思います。実証そのものの成果はもちろんですが、そこから新たな共創のアイデアや連携が生まれることに大きな意味があります。こうした予想外の出会いや化学反応を生み出せるのが、TMIPならではの強みですね。
——TMIP事務局としては、どのような発見がありましたか。
大賀(TMIP):TMIPの会員企業の中でも、メーカーを中心に、「ある程度形になってきているが、世の中に出す機会がない」と、プロダクトを大切に抱え込んでいるケースが少なくありません。point0とのプロジェクトでは、ある程度完成されたプロダクトを、課金を伴う実運用を行い、ユーザーの声を収集するという形で、事業化に向けた検証ができることを示せました。
また、coordimateとのプロジェクトでは、場所だけでなく、そこにいる利用者の属性やコミュニティの差異も、まちまるごと実証実験としての強みになるとわかった。実証実験を通してみなさんが新たな気付きを得て、それが改善につながり、事業を加速させる姿を示していただけたことも大きいです。
「まずはTMIPに相談を」
——最後に、今後の展望と、実証を検討している方へのメッセージをお願いします。
飯野(coordimate):おかげさまで現在、海外も含めて25〜30件ほどの有償PoCの話をいただいています。デベロッパーやアパレル企業の方々は、人手不足の中でも「人による接客は諦めたくない」とおっしゃいます。今後は次世代デジタルミラーにとどまらず、店舗そのものをソフトウェア化し、AI時代の新しい接客・小売のOSとして展開する構想を進めています。いつか、私たちのサービスとOFFMOを組み合わせ、全く新しいアパレル店のPoCをするために丸の内に戻ってこられたらうれしいですね。
AI時代には、人とのコミュニケーションや場所、そこに集まる人といった代替できないものの価値が高まります。これだけ多様な人が集まる街を贅沢に活用することは、1社の力では到底叶いません。新しいことを試したいときは、まずTMIPに駆け込めばクイックに検証できるかもしれない。そう考えてもらえれば、私のように1年間営業に駆け回った挙げ句、資金ショートの危機に陥ることもないかもしれません(笑)。
豊澄(point0):大企業の新規事業は、いきなり億単位の売上を求められるなど、事業化のハードルが高い。だからこそまず社内で試し、point0の拠点で実証し、次に街で検証する。TMIPの力を借りれば、短期間でたくさんのユーザーの声を得られるだけではなく、発信力も得られます。
ただし、1つのまちで一定の成果が得られたからといって、大企業が求める水準の事業になるとは限りません。どれだけ実証実験を重ねても、「どれほどの市場があるか」を正確に把握するのは難しいですし、事業の成長性を知るには実際に事業として展開してみる必要があります。そこには当然大きなリスクも伴います。
そこでpoint0では、大企業で生まれた新規事業を一旦お預かりして、3年ほどpoint0の事業として運営した後、うまくいけばお戻しする取り組みを始めていて、OFFMOはその取り組みの3例目になる予定です。丸の内という日本有数のビジネスエリアで実証実験ができる「まちまるごと実証実験」は、こうした挑戦の第一歩として最適な仕組みだと感じています。
大賀(TMIP):「実証実験ができる」環境はさまざまありますが、丸の内という「リアルなまち」で実証実験ができることは、この取り組みの大きな意義だと思っています。エリアそのものに発信力があり、多様な人がいて、特定の企業に依らないリアルなフィードバックが得られる。「まちまるごと実証実験」を通して、約35万人が働くこのエリアにアクセスできる価値の大きさを、より多くの方に感じてもらいたいですね。











