TMIP事務局浅見コメント
都市の屋上を活用した国産サウナ事業は、環境負荷の低減のみならず、街に新しい価値と交流を生み出す試みです。屋上空間の活用や木材循環に関心のある企業の皆様と共に、持続可能な都市空間の可能性を広げてまいります。
2024年10月TMIPは、株式会社野村総合研究所、グリーンタレントハブ株式会社、トークンエクスプレス株式会社と共同で東京都が運営する「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)」で10者のみが選ばれる重点分野(環境・エネルギー・気候変動分野)の協定事業者として採択され、TMIPスタートアップ支援プログラム「東京から環境・エネルギー領域の社会課題解決スタートアップを全国・世界へ。 Tokyo GreenTech Challenge(以下、TGC)」を始動させました。
スタートアップの成長加速を、350団体以上が参画するTMIPコミュニティを活用して実現することを目指し、TGC採択事業には7社の事業領域が異なるスタートアップが選定されました。2025年7月から注力領域やプロジェクトを発信するTMIP会員限定のイベント「TMIPランチコミュニティ」に登壇された様子を全7シリーズでお届けします。
10月10日のランチ会で登壇したのは、株式会社Vanwavesの共同代表である木下雄斗氏。同社が展開するサウナ事業と、都市の屋上空間の活用を目指す同社の取り組み、そしてパートナーとして参画している株式会社yue 共同創業者/取締役 三浦燿氏を交え、 Tokyo GreenTech Challengeにおける「大手町エリアでの屋上サウナ運営」に関する実証実験の内容が語られました。
INDEX
「純国産サウナメーカー」として、独自のポジションを築く
株式会社Vanwaveは、2020年3月の創業以来、サウナ設備の開発・製造・販売を手がけてきました。昨今のサウナブームに着目し、サウナ事業に乗り出す企業も少なくないなか、同社は「国産材」と「国内製造」にこだわった独自の路線を歩んでいます。
木下氏「サウナ販売業を展開する企業は少なくありませんが、そのほとんどが欧州を中心とした海外からの輸入品を販売しています。一方、私たちは日本で盛り上がっているサウナブームを、日本の市場内で盛り上げたいと考え、国産の木材を使い、国内で製造したサウナを販売しています。
具体的には、サウナストーブの開発・製造は東京都・大田区の町工場と協力して行い、建屋には日本の代表的な木材であり、日本の四季のある環境に適した檜や杉を使用することにより、高耐久で高品質なサウナをつくることができます。多くの民間企業や行政からも協力を得ながら、純国産のサウナ設備を製造しています。また、単なるメーカーとしてだけでなく、設計から施工、外構工事、さらには消防や公衆浴場法、旅館業法といった法規制をクリアするためのコンサルティングなど、サウナの設置から運営まで、ワンストップでサポートできる体制を構築している点が強みとなっています」
都市の“未開拓地”としての屋上。その活用メリットと壁
また、「屋上」を積極的に活用している点も同社の特徴の一つです。
サウナ施設運営などの事業には、一定の広さを持つ土地が必要とされますが、東京をはじめとする都市部では新たに開発できる土地がほぼ存在しない状況が続いています。しかし、「新たに施設をオープンさせたいというニーズはたしかにある」と木下氏。そこで目を付けたのが、「屋上」でした。
しかし、屋上利活用には大きなハードルが存在します。木下氏はその最たる例として、「法制度・規制」を挙げました。
木下氏「そもそも、建ぺい率や容積率が限界の場合、屋上に新たな建築物を建てることはできません。その問題をクリアできたとしても、たとえば7階建ての建物の屋上にサウナをつくろうとすると『8階建てになる』と見なされ、建物自体の構造計算からやり直されければならない場合があり、設置のハードルは高くなります」
さらに、建築資材を屋上まで運ぶ必要があり、設置コストも低層階にサウナを設置する場合に比べ高くなる傾向があるといいますが、「都市部において土地を新たに開発するコストと比較すれば、屋上にサウナを設置する経済的なメリットは大きい」と木下氏。
さらに、「屋上とサウナ」という組み合わせならではのメリットがあるといいます。
木下氏「サウナ愛好家の方であればご存じだと思いますが、サウナというアクティビティにとって、特に重要なのは『外気浴』です。サウナと水風呂、そして外気にあたる外気浴がセットになって初めて得られる心地よさがあるわけですが、都内には数えるぐらいしか外気浴できる施設はありません。
屋上サウナは、この需要と供給のギャップを埋める存在となります。空に向かって寝転ぶという体験は、都内では非常に希少であり、これ自体が一つのコンテンツとして価値を持つと考えています」
日本を代表するオフィス街に、屋上サウナをつくる
しかし、木下氏自身が述べた法規制に関する問題をクリアしなければ、屋上サウナを普及させることはできません。Vanwaveが提案する解決策は、サウナを建築物ではなく「工作物」として扱うという革新的なアプローチです。
準防火地域(「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」として指定された地域。建物の階数や延べ床面積に応じて、耐火建築物ないしは準耐火建築物にする必要がある)での事例として、同社は屋根を着脱式にしたサウナを設計し、建築物ではなく「工作物」として屋上に設置することを申請。結果的に市役所の承認を得ることに成功したといいます。
さまざまな事例を通して蓄積したノウハウを応用すべく、Vanwavesは「Tokyo GreenTech Challenge」において、大手町エリアにあるオフィスビルの屋上にサウナを設置・運営する実証実験の実施を検討中。この実証実験には木材の流通プラットフォームを運営する株式会社森未来がパートナーとして参画し、共にオフィスビルの屋上というロケーションに適した「外部からの目が届かない」「プレハブ式」のサウナの設計を進めています。
また、温浴施設のプロデュース事業や委託運営事業を展開する株式会社yueもこのプロジェクトに参画。ランチ会には同社の共同創業者/取締役である三浦燿氏が登場し、参加者にこう呼び掛けました。
三浦氏「私たちはこれまで、さまざまな温浴施設のコンサルティングを手掛けてきました。そのなかで感じているのは、コラボレーションの可能性です。
浅草にある銭湯と、某スポーツブランドのコラボレーション事例があります。銭湯をランニングイベント内で使用できるランニングステーションとして活用していただいたところ、イベント当日にたくさんのお客様に来ていただいただけではなく、その方々がリピーターとなり、継続的な売上につながったのです。
銭湯やサウナ施設には、さまざまな活用方法があると思っていますので、ここにお集まりの企業のみなさまともコラボレーションをし、新たな可能性を見出したいと考えています」
TMIPスタートアップ支援プログラム「Tokyo GreenTech Challenge」について
TMIPは東京都が運営する「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)」の重点分野(環境・エネルギー・気候変動分野)の協定事業者として採択されています。本事業の協定事業者に採択されたことに伴い、TMIPスタートアップ支援プログラム「東京から環境・エネルギー領域の社会課題解決スタートアップを全国・世界へ。 Tokyo GreenTech Challenge」を始動し、事業支援するスタートアップ7社を選定いたしました。
本プログラムを通じて、スタートアップが最短距離で社会課題解決のインパクトを実現できるよう、 350団体を超えるTMIPコミュニティを活用し、「大企業・自治体等のプレイヤー集め」、「協調領域の抽出」、「実証費用・フィールド提供」など伴走支援いたします。
▶TOKYO SUTEAM採択リリース:https://www.tmip.jp/ja/report/5709
▶「Tokyo GreenTech Challenge」採択事業7社決定リリース:https://www.tmip.jp/ja/report/11420




