TMIP事務局浅見コメント
水資源はあらゆる産業活動の基盤であり、持続可能な経営に欠かせないテーマです。TerraInsight社の技術は、リスク管理から事業戦略まで幅広く活用可能です。共創にご関心ある皆様との協力をお待ちしています。
2024年10月TMIPは、株式会社野村総合研究所、グリーンタレントハブ株式会社、トークンエクスプレス株式会社と共同で東京都が運営する「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)」で10者のみが選ばれる重点分野(環境・エネルギー・気候変動分野)の協定事業者として採択され、TMIPスタートアップ支援プログラム「東京から環境・エネルギー領域の社会課題解決スタートアップを全国・世界へ。 Tokyo GreenTech Challenge(以下、TGC)」を始動させました。
スタートアップの成長加速を、350団体以上が参画するTMIPコミュニティを活用して実現することを目指し、TGC採択事業には7社の事業領域が異なるスタートアップが選定されました。2025年7月から注力領域やプロジェクトを発信するTMIP会員限定のイベント「TMIPランチコミュニティ」に登壇された様子を全7シリーズでお届けします。
9月に開催したランチ会に登壇したのは、統合的な水資源管理サービスを提供するディープテック企業、TerraInsightの代表取締役CEOである今井義仁氏です。地球と産業の未来に欠かせない「水資源」を守るだけではなく、ビジネスに生かす——同社が展開する水資源管理サービスの内実が語られました。
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「統合水資源管理モデル」を社会実装し、世界の「水問題」を解決する
TerraInsightは、京都大学防災研究所から生まれたスタートアップで「統合水資源管理モデル」という技術をデータプラットフォームを通じて社会実装することを目指しています。
今井氏は「『もし、水が使えなくなったらどうなるのか』ということを考えてもらいたい」と呼びかけ、水資源の枯渇リスクについて説明しました。
今井氏「みなさんも、雨量不足でダムがカラカラになっている、あるいは、取水制限がかかって工場で水が使えなくなっている、といったニュースを耳にしたことがあると思います。一口に『水』と言っても、工業用水、生活用水、農業用水などが存在し、これは水があらゆる事業に欠かせない資源であることを意味しています。
そんな水資源は、いま気候変動や社会変化の影響を受け、大きな危機にさらされています。私たちはこうした状況を踏まえ、事業を通して環境の保全やネイチャーポジティブはもちろんのこと、クライアントのみなさんの事業性や社会性も向上させる取り組みを進めていきたいと考えています」
TerraInsightがターゲットとするのは、水資源を活用するすべての企業です。信頼性のある自然関連データをベースに、ビジネスやプロジェクトの管理、業務の効率化やコミュニケーションの向上、意思決定の迅速化に役立つ統合的な水資源管理サービスを開発・提供しています。
今井氏「業種業態を問わず、水資源を活用するビジネスにおいて重要なのは、将来的に使用できる水量と、その生産地と消費地』を把握し、季節ごとの取水制限などにも対応しながら、事業運営に必要な水資源を確保し続けることです。そして、そのためには正確なデータに基づいて水資源を管理しなければなりません。
また、水資源管理はネイチャーポジティブ社会を実現するための国際目標の中で、重要な開示項目として明示されています。資源の使用量を低減させ、持続可能な開発と生産の実現を目指す、さまざまな自治体や企業との実証実験に取り組んでいます」
自治体や企業、そして地球が抱える水資源リスクの解消を目指す同社のビジネスを支えるのが、「統合水資源管理モデル」です。この技術は、京都大学防災研究所が30年以上研究を続ける基幹技術の一つで、気候変動や社会活動の影響を考慮して、大気や陸面での蒸発散などの水の流れを解析。さまざまなエリアごとの水資源量やその他の関連リスクを、グローバルからローカルまで、あらゆるスケールで算出することを可能にします。
TerraInsightはこの技術と、独自に構築したとする「気候変動の影響をふまえた250年分のビッグデータ」の解析を組み合わせ、水資源の増減や将来的なリスクを分析・可視化できるプラットフォームを運営。クライアントに対し、拠点を置くエリアや地域特性を考慮したデータを提供することを通して、サスティナブルな生産を実現することをサポートしています。
水資源管理を事業戦略に組み込み、ビジネスを加速させる
そんなTerraInsightは現在、「Tokyo GreenTech Challenge」において東北電力との実証実験を行っています。この取り組みはダム管理における最大の課題である、「治水と利水(発電や農業用水の確保)の最適なバランス」の実現を目指すものです。
今井氏「治水、すなわち防災面から言えば、ダムは開けておいた方がいいのですが、利水という意味ではダムを開けず、水を貯めておきたい。この治水と利水の最適なバランスを維持し続けるためには、どの時期にどれくらいの水が溜まるのかを正確に予測する必要があります。
東北電力様との実証実験では、統合水資源管理モデルを活用し、ダムへの流入水量を予測することで、無駄に流す水の量を減らし、発電に使う水量を増やすチャレンジをしています。この実証実験を通して、ダムの発電効率を向上させ、ダムそのものの価値を高めることにつなげたいと考えています」
TerraInsightがクライアント提供するデータは、BCP(事業継続計画)やリスク管理、今後義務化が予想されるサステナビリティ関連の情報開示など、多岐にわたる分野での活用が見込まれています。
今井氏「無料で公開されているデータもありますが、事業戦略の一環として水資源管理に取り組み『工場のオペレーションに活用したい』あるいは『ネイチャーポジティブなソリューションを推進したい』と考えているのであれば、ぜひ私たちのサービスの利用を検討していただければと思います」
今井氏は今後の展開として、再生可能エネルギー、食料生産、都市インフラ、資産管理、金融・投資分野など、8つの領域への進出を考えているといいます。既に行政機構である関西広域連合が取り決める森林環境税の制度にもデータが活用されるなど、実績も広がっています。
TerraInsightは、まだ創業間もない企業ですが、30年以上にわたって京都大学防災研究所で開発されてきた技術を背景に、水資源管理の新たな可能性を切り開こうとしています。
TMIPスタートアップ支援プログラム「Tokyo GreenTech Challenge」について
TMIPは東京都が運営する「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)」の重点分野(環境・エネルギー・気候変動分野)の協定事業者として採択されています。本事業の協定事業者に採択されたことに伴い、TMIPスタートアップ支援プログラム「東京から環境・エネルギー領域の社会課題解決スタートアップを全国・世界へ。 Tokyo GreenTech Challenge」を始動し、事業支援するスタートアップ7社を選定いたしました。
本プログラムを通じて、スタートアップが最短距離で社会課題解決のインパクトを実現できるよう、 350団体を超えるTMIPコミュニティを活用し、「大企業・自治体等のプレイヤー集め」、「協調領域の抽出」、「実証費用・フィールド提供」など伴走支援いたします。
▶TOKYO SUTEAM採択リリース:https://www.tmip.jp/ja/report/5709
▶「Tokyo GreenTech Challenge」採択事業7社決定リリース:https://www.tmip.jp/ja/report/11420





